令和2年10月6日
特定行政書士 安平 一樹
本年度から、従来のセンター試験の制度が変更され、「大学入試共通テスト」(以下、「共通テスト」とします。)へ移行します。
共通テストの特徴は、知識の理解の質を問う問題に加え、思考力・判断力・表現力を発揮することが求められる問題を重視している点にあります。
そこで、学校法務(いじめ対策等)を専門とし、子どもの学習指導も行っている当職が、共通テストの「概要」を整理します。
1 出願期間
まず、令和3年度共通テストの出願期間は令和2年9月28日(月)から同年10月8日(木)の11日間と非常に短いので注意してください(10月8日消印有効)。
2 試験日
①令和3年1月16日(土)・17日(日)が本試験となります。ただし、新型コロナウイルス感染症による休校等の影響で、学業の遅れを在学する校長に認められた者は、追試験である②令和3年1月30日(土)・31日(日)の日程をあらかじめ選択して受験することも可能です(よって、すでに高校を卒業されている方は、あらかじめ追試験を選択することはできません。)。
なお、新型コロナウイルス感染拡大等の不測の事態に備え、②の追試験のさらに追試という位置づけである「特例追試験」が③令和3年2月13日(土)・14日(日)にも用意されています。
つまり、①の本試験と②の追試験のどちらを受験するか、校長の証明を得た現役生は選ぶことができます。そして、①本試験を受験する予定であったすべての受験生のうち、本試験を受けられなかった者も②の追試験を受験できます。また、あらかじめ②の追試験を本試験に選択した現役生が受験できなかった場合には、③の特例追試験を受験することができます。
①・②の日程選択の注意点として、②の追試験は私立大学の受験日と重なるおそれがありますので、志望校の受験日をよく確認した上で選択する必要があります。
なお、昨年度は大学受験生2名を当職は指導しましたが、その子たちの私立大学受験は2月1日からのスタートでした。日程が重なるかどうかだけでなく、私立大学受験への準備等、総合的に考慮することが重要と考えられます。
3 試験内容
記述式の導入は見送られ、全問マークシートでの出題となります。
また、英語の出題方法や配点には重要な変更点があります。英語は①リーディングと②リスニングが同一の配点となり(①リーディングが従来の200点から100点に、②リスニングは50点から100点に変更)、①リーディングは読解に特化した内容に変更されます。リスニングには、音声を2回流す問題と1回流す問題があります。
なお、英語の①リーディング問題につき読解に特化する説明として、センター試験では問題の初めに出題されていた「発音・アクセント・語句整序などを単独で問う問題は出題しない」とされています。つまり、それ単独での出題はせず読解力を試すことに特化するという意味ですが、長文読解問題の中で、問題文に合わせて発音・アクセント・語句整序問題が出題される可能性はあると考えられます。
その他にも変更点がある科目もありますので、受験する科目についてはよく案内を読む必要があります。
全体的に、「知識の理解の質を問う問題に加え、思考力・判断力・表現力を発揮することが求められる問題を重視して出題する」という共通テストの趣旨に従って、これまでのセンター試験とは出題内容において異なった問題も作られると予測されます。
つまり、これまでのように知識の理解を問う問題も出題されつつ、思考力等の応用力が試される問題も出されると予想できます。
よって、センター試験の過去問を解くことは、共通テスト対策においても重要な意義があると考えられます。
4 共通テストの利用と対策の方針(私立大学受験生用)
共通テストはセンター試験と同様に、国立大学受験生のみでなく、私立大学受験生にも関係してきます。
つまり、国立大学受験の場合は共通テストの受験は必須であり、それが「1次試験」の役割を果たします。
他方で、私立大学受験においては共通テストの受験は必須ではありませんが、共通テストの成績が、共通テスト利用型で出願した私立大学の合格ラインを超えていた場合、当該私立大学の合格を得ることができます(私立大学によっては、さらに大学独自の個別試験を課すところもあります。)。
もっとも、私立大学における共通テスト利用型入試は、私立大学が個別に試験を課す「一般入試」より競争率や受験生のレベルが高く、難易度が上がる傾向にあります(第1志望はさらに上をめざす受験生が、滑り止めの早期で簡易な確保に共通テストを利用するという場面を想起すればわかりやすいと思います。)。
また、私立大学によっては、たとえば一般入試では3科目型だけでなく2科目で受験できる日程があっても、共通テスト利用型では2科目型は用意されておらず3科目を受ける必要があるといった違いも生じ得ます(大学及び学部によりますので、志望校の受験要領をよく確認してください。)。
よって、私立大学が第1志望の受験生にとっては、「一般入試」が主戦場であると理解して、本年度共通テストの出題形式等を気にしすぎず、センター試験の過去問を解けばよいと考えられます。
そして、志望する私立大学の過去問対策を最重要視して努力することが大事です。それは、英語においてリスニングの配点が増した共通テストと、リスニングを課さない私立大学入試との違いを考えても明白でしょう。
5 ニュース紹介
日経新聞電子版「大学入試、予定通り実施 共通テストは2週間後に追試」(2020年6月17日)
日経新聞の記事はこちら
東京新聞(Tokyo web)「初の大学入試共通テスト、出願開始 形式で迷走、コロナ休校・・・現場『粛々と準備』」(2020年9月28日)
東京新聞の記事はこちら