令和2年11月14日
特定行政書士 安平 一樹

まず、日本経済新聞電子版「行政手続きの認め印全廃 婚姻届や車検 実印は継続」(2020年11月13日)の記事を紹介します。
日本経済新聞の記事はこちら

菅総理の下、行政手続きの押印廃止が提唱され河野大臣によって遂行されてきましたが、当職も行政手続きの専門家として、どのような基準でどの手続きの押印が不要となるのかを注視していました。
そして、その基準が明らかとなり、実印が必要な手続きのみ押印を廃止せず、認印でよいものについては全廃するという判断が示されました。

これは、個人であれば市役所等の市区町村の役場、法人であれば法務局に登録されている実印のみ存続させ(本人の印であるという証拠力が高い)、誰でも入手できる三文判でもよい認印(本人の印であるという証拠力がそれ単体では低い)は廃止するという基準と読めます。

他方で、重要な手続きであっても実印が要求されるものと認印でもよいものがあるため、たとえば、婚姻届や離婚届のように親族関係に変動を生ずる重要性が高い書面であっても認印でよかったものは押印が廃止されることとなります。

この点、本来であれば認印でよかった書類のうち、婚姻届や離婚届のように重要な手続きを精査した後、実印へ変更すべきかをその後に制定される手続きと合わせて検討した上で認印のみ全廃するのであれば合理性がありますが、今回はスピードを重視した結果と考えられます。
なぜならば、押印には本人の意思を証明するほか、その手続きの重要性を認識して同意するという意義があるからです。

よって、今後、認印ゆえに押印が廃止される手続きにつき、議論によっては実印に変更される可能性もあると予測されます。

認印を全廃するメリットとして、政府が推進する行政手続きのオンライン化が容易になる点があります。
どのようなシステムにより様々な手続きを構築していくのか、今後の動向が注目されます。

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