更新:同年5月31日
ビジネス法務エグゼクティブ
(ビジネス実務法務検定1級)
特定行政書士 安平 一樹
一時支援金につき、その概要を以下に解説します。
あくまで概要解説なので、詳しくは文末の参考文献をご参照ください。
一時支援金の概要
一時支援金は、令和3年(2021年)に発令された緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛により、売上が50%以上減少した中小法人・個人事業主・フリーランス等の事業者のための給付金です。
給付対象
①緊急事態宣言に伴う飲食店時短営業または外出自粛等の影響を受けていること、②2019年または2020年の1月・2月・3月のいずれかの月と比べて、2021年1月・2月・3月の同月で売上が50%以上減少していること(1月ならば1月同士で比較すること)、が一時支援金申請に必要となります。
具体的には、飲食関連では店舗のみでなく、その飲食店に食品や機材を提供している製造業者、当該製品を卸している流通関連事業者等、飲食店に関連した幅広い業種が給付対象となり、また、対面で個人向けに商品・サービスを提供する事業者等、給付要件を満たせば業種や所在地を問わず給付対象となります(緊急事態宣言の地域外であっても給付対象となる場合もあります)。
なお、地方公共団体から時短営業の要請を受け、協力金の支給対象となった飲食店は、一時支援金の給付対象外となります。
詳しくは、文末の参考文献「緊急事態宣言の影響緩和に係る一時支援金の詳細について」を参照ください。
給付額の計算方式
個人事業主は上限30万円、中小法人は上限60万円が給付額となります。
以下に青色申告(事業所得)の場合の計算式を解説します(青色申告(主たる収入が雑所得・給与所得)・白色申告の場合は計算式が異なります)。
2019年または2020年の1月・2月・3月の合計売上-2021年の対象月の売上×3か月
上記計算式を、具体例を用いて解説します。
今回は、2019年を基準年とし、2021年の対象月を比較する例としました。
実際の申請の際には、2019年・2020年のどちらを基準年とし、2021年1月~3月のどこを対象月にするかで給付額が異なりますので、よく注意して試算してください。
2019年 1月 |
2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
60万円 | 40万円 | 40万円 | 40万円 | 20万円 | 30万円 |
2021年 1月 |
2月 | 3月 | |||
20万円 | 30万円 | 10万円 |
まず、2021年1月~3月で最も売上の低い対象月を選びます。
この場合、2021年3月が売上10万円で最も低いので、ひとまず3月を選びます。
そして、2021年3月の売上10万円が、2019年3月の売上40万円の50%以下になっているかを確認します。
このケースでは、50%以下になっているので、そのまま3月を対象月にできます(50%以下になっていない場合は、別の対象月を選び直します)。
計算の方法は、2019年1月・2月・3月の売上を足します。
この場合、60万円+40万円+40万円=140万円となります。
そして、この140万円から、2021年3月の売上10万円×3か月分=30万円を引きます。
140万円-30万円=110万円
よって、この110万円が給付基準額となり、個人事業主であれば上限である30万円、法人であれば上限である60万円が実際の給付額となります。
必要書類
必要書類は、以下のとおりとなります。
① 確定申告書類
・確定申告書別表1の控え(2019年及び2020年の1月~3月を含む期のもの)
・法人事業概況説明書の控え(2019年及び2020年の1月~3月を含む期のもの)
※e-Taxで申告している場合は「受信通知」または「受付日時が印字された控え」が必要です。
②2021年の対象月の売上台帳等
例:経理ソフトから抽出した売上データ、エクセルで作成した売上データ、手書きの売上帳のコピー
③法人名義の口座通帳の写し(法人の代理者名義も可)
※銀行名・支店番号・支店名・口座種別・口座番号・名義人が確認できるようにデータ化し、紙通帳であれば通帳のオモテ面と通帳を開いた1・2ページ目の両方を添付します。
④履歴事項全部証明書(申請時から3か月以内に発行されたもの)
⑤宣誓・同意書
⑥一時支援金に係る取引先情報一覧
①確定申告書類
<青色申告の場合>
・確定申告書第一表の控え(2019年度分・2020年度分)
・所得税青色申告決算書の控え(2019年度分・2020年度分)
<白色申告の場合>
・確定申告書第一表の控え(2019年度分・2020年度分)
※e‐Taxで申告している場合は、青色・白色申告ともに「受信通知」または「受付日時が印字された確定申告書の控え」が必要となります。また、確定申告書の控えに収受日付印がない場合や、e‐Taxで申告し受信通知がないときは、提出する確定申告書類の年度の「納税証明書(その2所得金額用)」が必要となります。
また、「収受日付印等」および「納税証明書(その2所得金額用)」のいずれも存在しない場合には、提出する確定申告書類の年度の「課税証明書」または「非課税証明書」を併せて提出することとなります。
②2021年の対象月の売上台帳等
例:経理ソフトから抽出した売上データ、エクセルで作成した売上データ、手書きの売上帳のコピー
③通帳の写し(申請者名義の口座の通帳の写し)
※銀行名・支店番号・支店名・口座種別・口座番号・名義人が確認できるようにデータ化し、紙通帳であれば通帳のオモテ面と通帳を開いた1・2ページ目の両方を添付します。
④本人確認書類
運転免許証(両面)やマイナンバーカード(表面)等のコピー
⑤宣誓・同意書
⑥一時支援金に係る取引先情報一覧
個人事業主(主たる収入が雑・給与所得)の場合
上記に加え、⑦国民健康保険の写し、⑧業務委託契約等収入があることを示す書類が必要となります。
事前確認について
一時支援金申請では、登録確認機関による「事前確認」を受ける必要があります。
当事務所でも、事前確認を「無料」で行っています。
詳しくは、下記記事をご参照ください。
当事務所の「事前確認」(無料)の紹介
なお、この一時支援金の事前確認につき、申請希望者が①事前確認を受けられない、②高額な手数料を請求されるという問題が生じましたが、その原因に関心がある方は、下記記事を参照ください。
一時支援金における事前確認の問題点の解説
申請期限
一時支援金の申請期間は2021年5月31日(月)までとなりますが、同日までにマイページを作成し、期限延長の申込みをすれば約2週間の期間延長の利益を受けられます。
特例
なお、原則的な申請方法のほか、「証拠書類等及び給付額の算定等に関する特例」があります。
まず、証拠書類等に関する特例して、個人で確定申告義務がない方は住民税の申告書類の控えで確定申告書に代えることができ、法人で確定申告書を合理的な理由で提出できないときは、確定申告書を税理士の署名がある事業収入を証明する書類で代替可能となります。
次に、給付額の算定に関する特例(一部、証拠書類に関するものも含む)については下記のとおりです。
①2019年・2020年新規開業特例
対象:2019年または2020年に開業した中小法人等・個人事業者等
給付額=開業年の年間事業収入÷開業年の設立後月数※¹×3-2021年対象月の月間事業収入×3
※¹ 開業日の属する月も、操業日数にかかわらず、1ヶ月とみなす。
★緊急事態宣言発令後の2021年以降に開業した事業者に関する特例はない。
②合併特例
対象:事業収入を比較する2つの月の間に合併を行った中小法人等
給付額=合併前の各法人の2019年又は2020年の1月~3月の事業収入の合計-合併後の法人の対象月の月間事業収入×3
③事業承継特例
対象:2021年以降に、事業収入を比較する2つの月の間に事業の承継を受けた個人事業者等
給付額=事業を行っていた者の2019年または2020年の1月~3月の事業収入-事業の承継を受けた者の対象月の月間事業収入×3
④法人成り特例
対象:2021年以降に、事業収入を比較する2つの月の間に個人事業者から法人化した者
給付額=法人化前の2019年又は2020年の1月~3月の事業収入-法人化後の対象月の月間事業収入×3
⑤季節性収入特例
対象:月当たりの事業収入の変動が大きい中小法人等・個人事業者等
給付額=2019年または2020年の1月~3月の事業収入の合計※²-2021年1月~3月の事業収入の合計
※²1月~3月の事業収入が年間事業収入の50%以上である必要はない。
白色申告の場合は、「2019年又は2020年の年間事業収入÷4」
⑥連結納税特例
対象:連結納税を行っている中小法人等
それぞれの法人が給付要件を満たす場合、各法人ごとに給付申請を行うことができる。
確定申告書の控えについては、連結法人税の個別帰属額等の届出書で代替可能となる。
⑦罹災特例
対象:2018年または2019年の罹災を証明する罹災証明書等を有する中小法人等・個人事業者等
給付額=罹災した年又はその前年の1月~3月の事業収入の合計-2021年対象月の月間事業収入×3
⑧NPO法人・公益法人等特例
対象:特定非営利活動法人及び公益法人等
・特定非営利活動法人及び公益法人等の場合
⇒確定申告書の控えなどについて各種書類で代替可能
・寄付金等を主な収入源とする特定非営利活動法人の場合
⇒追加の書類の提出により寄付金等を収入に含めて給付額を算定可能
<参考文献>
・緊急事態宣言の影響緩和に係る一時支援金の詳細について(中小企業庁長官官房総務課)
・中小法人等の申請必要書類(中小企業庁サイト)
・個人事業者等(事業所得)の申請必要書類(中小企業庁サイト)
・個人事業者等(主たる収入が雑・給与所得)の申請必要書類(中小企業庁サイト)