令和元年11月27日
特定行政書士 安平 一樹

 市民法務研究会(千葉県行政書士会千葉支部)において、千葉市民会館で行政書士を対象として上記タイトルの研修講師を務めましたので、ここにご報告致します。

この講義は平成28年8月27日に行いましたが、非常に高評であったことと、本講義のように判例を深く読み込む内容の研修は行政書士会では実施されていないため、令和元年10月19日にも改正相続法に対応するかたちで補訂し、2度目の講義を実施しました。
内容はレベルの高いものとなっていますが、受講者の行政書士からは「法律家としての意識が変わった。」、「難しい問題なのにわかりやすく何よりおもしろかった。」等、さまざまなご意見をいただきました。
このことから、講義内容はいずれ電子書籍にして出版する予定でいます。
つまり、本講義での経験がきっかけとなり、書籍を出版しようと当職が考えるようになったのであり、市民法務研究会の先生方にはこの場を借りてお礼申し上げます。

さて、自筆証書遺言(手書きの遺言)には本来、遺言者(遺言を書いた人)の署名とともに押印が不可欠であり、押印を欠く遺言は原則として無効です。しかし、例外的に有効となり得る場合を、実例に基づく設問の検討をとおして、判例を分析することで明らかにし、同時に法律家としての法情報調査能力と法的思考力を養う内容となっています。
さらには、行政書士業務の可能性にまで言及するものとなっています。

なお、本講義レジュメを作成する際に参考にした文献のうち、判例評釈を除く書籍をご紹介したいと思います。

まず、相続法に関する基本書を2冊紹介します。

「家族法実務講義」(有斐閣)
著者:梶村太市/岩志和一郎/大塚正之/榊原富士子/棚村政行
タイトルにあるように、実務の観点から家族法を解説する基本書であり、実務家必携の書といえます。なお、今後、改正相続法に対応した改訂版が出ることが予測されます(本稿の執筆時点では出版されていません。)。

著者:梶村太市/岩志和一郎/大塚正之/榊原富士子/棚村政行
「民法Ⅳ〔補訂版〕親族・相続」(東京大学出版会) 著者:内田 貴
親族・相続法を理論的に網羅し、ケースも用いて解説している基本書。本書も今後、改正相続法に対応した改訂版が出ることが予測されます(本稿の執筆時点では出版されていません。)。
次に、判例の定義を検討する際に参考にした2冊を紹介します。

「法律学小辞典〔第5版〕」(有斐閣)
編集代表:高橋和之/伊藤眞/小早川光郎/能見善久/山口厚
法律に関する用語の定義が正確に記されており、「法律家にとっての辞書」と評価できます。

編集代表:高橋和之/伊藤眞/小早川光郎/能見善久/山口厚

「判例とその読み方〔三訂版〕」(有斐閣) 中野次雄 編
最高裁判所調査官(わかりやすくいえばエリート裁判官)経験者により、判例の意義から調査方法、その読み方まで解説された希少な書籍です。

つづいて、民事判例を読む際には民事訴訟法の知識も必要不可欠であるため、講義で解説する際に参考にした基本書を紹介します。

「裁判所職員総合研修所監修 民事訴訟法講義案〔三訂版〕」(司法協会)
裁判所職員の研修用に裁判官によって執筆された実務に即した書籍であり、その内容は正確で信頼できます。

最後に、行政書士業務の可能性を検討する上で参考にした書籍を紹介します。
「行政書士法コンメンタール〔新10版〕」(北樹出版) 著者:兼子仁
行政書士法を法学者の視点から解説しており、行政書士が参考にすべき「行政書士法の教科書」の1つといえます。