令和4年3月15日
更新:令和4年4月26日
ビジネス法務エグゼクティブ
(ビジネス実務法務検定1級)
特定行政書士 安平 一樹

当職は法律実務を原点とし、執筆にも力を入れており、昨年はそれまで千葉県行政書士会内で担当した数々の研修講師の内容・経験に基づき、初めに「行政書士のための改正債権法講義」を電子書籍で出版し、立て続けに4冊の電子書籍を出す予定でした。

しかし、コロナ禍に困窮する事業者への支援策として、2021年に一時支援金とその延長版である月次支援金が実施され、その申請をするには「事前確認」を受けなければならず、その事前確認を受けることができない事業者が続出する等の問題が生じました(事前確認を受け付けてもらえず、受けられても数万円という高額な手数料を請求される等により、事前確認を受けることができない問題)。

そこで、当職は自身が会社設立手続を代理した会社社長の要請により、事前確認を実施する権限を有する登録確認機関となっていたため、自身の顧客に限らず、広く一般に事前確認を無料で受け付ける対応をとることにしました。
そのため、計361者(一時支援金270者・月次支援金91者)の事前確認依頼が全国から殺到し、書籍を執筆する時間的余裕を完全に失ってしまいました。

他方で、当職から一時支援金の事前確認を受けた方からは生じていなかった関係で、当初は把握していなかったものの、「事前確認を受けられない」という社会問題の次に、「不備ループ」という新たな問題が生じていることを知るに至りました。
つまり、申請希望者・登録確認機関の双方の苦労の末、事前確認というハードルを乗り越え「事業性の認定を受けた申請者」に対して、さらに「事業を行っていない等の不正な申請者」であるという疑いが事務局審査部によりかけられ、申請には不要な大量の書類提出が求められ、不備通知の連続から抜け出せなくなる現象が生じたわけです。

このとき、登録確認機関にお金を払って事前確認を受けたにも係わらず不備ループに陥り支援金を受給できない事業者の痛み・苦しみ、無料の登録確認機関側は事前確認を実施し尽力したのに「いい加減な事前確認をしたのでは?」と疑いを持たれてしまう立場、様々な方の苦境が思い浮かびました。

そのため、当事務所で事前確認を受けていない方からの不備ループ対応も「完全成功報酬型」(不備解消に至らなければ無報酬)で受け付け、一時支援金は2件、月次支援金は1件の不備ループ解消に成功しました。
逆にいえば、一時支援金は3件中2件、月次支援金は11件中1件しか解決できず、「月次支援金以降は一度不備ループに陥ると、原則として脱出できない」(ただし、全書類を不備通知どおりに提出できた事業者を除く。)という過酷な現実に直面しました。

そこで、事業復活支援金においては、上記経験から蓄積した知識と経験を活かし、事前確認段階から不備ループ対策を意識したチェックを行うため、当事務所は事前確認を有料に切り替え、全国対応をしています。
事業復活支援金の事前確認(有料)

しかし、当職が担当できる事前確認数にも限界があり、事業復活支援金からは無料で受けたいという方のニーズには応えられないため、①これまでの経験と知識に基づく整理と対策法を広く伝達するため、そして、②不備ループという現象の記録を残すため、本来出版したかった書籍よりも先に、事業復活支援金の不備ループ対策に関する電子書籍を執筆することにしました。
なぜなら、①の観点からは、事業復活支援金の対象期間が2021年11月~2022年3月であり、申請期限が2022年5月末であることを踏まえると、遅くとも2022年4月初旬の時点では執筆・出版していなければならないからです。
出版スケジュール等の変更について

一方で、社会問題に対する救済という観点から、書籍に記載する内容のうち、一般的な整理に関しては本サイト上でテーマ毎に連載形式で一般公開し(書籍の執筆が遅延した場合の救済の観点も含む。)、具体的な整理や検討については一般公開には適さないため、書籍でのみ示すという「書き分け」を行います。
つまり、不備ループの問題点の概要や注意点については本サイトで無料で閲覧でき、書籍ではその一般論を整理した内容に加え、具体的な検討を加筆して出版することになります(分量的には本サイト公開の一般論が6割、具体的検討が4割という比率の予定)。

なお、不備ループは申請者側だけでなく審査部にとっても不毛な現象です。
ですから、当事務所の一時支援金の事前確認を受けた方から原則として不備ループが生じていないように、本書籍の執筆・出版により、申請者を保護し、申請者の申請内容をより適切にすることで審査部の負担も減らす「市民と行政の架け橋」となれればと考えています。
これは、行政手続きを担う行政書士の果たすべき役割でもあります。

上記で定めた期限内に出版するため、ページ数は最小限とする必要があり、申請全般に対する説明は申請要領に譲るとして、「月次支援金までの情報を基にした不備ループ対策に特化した内容を安価で提供すること」に努めることをご了承ください。
なお、本連載及び本書は申請者を基準としつつ、登録確認機関や申請代行を業とする行政書士をも対象とした高度な内容まで平易に記述するため、それらを読んだ申請者は、本書等を未読の登録確認機関や行政書士よりも不備ループ対応力が身につくと考えます。

最後に、本書の出版がなくとも不備ループ問題が解消され、本書の執筆が徒労に終わることを心から願っています。

ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

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執筆者紹介

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