令和3年8月17日
更新:同年8月20日
更新:同年9月22日
更新:同年11月15日
更新:同年12月9日
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更新:令和4年1月26日
ビジネス法務エグゼクティブ
(ビジネス実務法務検定1級)
特定行政書士 安平 一樹

事業復活支援金の「不備ループ」について

事業復活支援金申請用に不備ループの内容と対策を解説した記事を紹介します。
事業復活支援金申請の注意点(連載形式)

なお、事業復活支援金の不備ループ対応は当事務所で事前確認を受けた方等に限定していますのでご了承ください。

一時支援金の「不備ループ」について

当事務所は、一時支援金における登録確認機関となり、計270件の事前確認を無料で実施し、面談・オンライン双方の方式で地域の事業者から遠方の方まで対応しました。
その理由は、緊急事態宣言により困窮する事業者を救済するためでした。
当事務所の一時支援金における事前確認の様子は、下記記事を参照ください。
一時支援金における当事務所の様子

そのことから、事前確認を通して適切な書類のそろえ方を助言し、申請後に不備が出た方にはその対処法も教え、そのすべてを無料で提供しました(もっとも、2件のみ特別に説明文を作成する等、一般的な範囲を超える対処が必要な不備があったので、それは申請手続きを受任し、給付額の3%+税で対処しました。)。
つまり、一時支援金申請手続きは複雑であるため、不備通知が出されることは頻繁にあり、本来、支援金を受給する権利のある事業者が不受給とならないよう、当事務所で事前確認を受けた方を最後まで守ることを目的として実施しました。

また、当事務所で事前確認をされた方以外からも、当職の事前確認を受けた方の紹介で「不備ループ」に陥っている方からの相談も受けています。
一時支援金申請手続きは難解なだけでなくその仕組み自体にも問題があるため、申請者が何度申請しても事務局から不備通知が届き申請が通らない「不備ループ」が生じることがあり、一度これにはまってしまうと自力で抜け出すことは困難です。

その「不備ループ」につき「報道特集」(TBSテレビ 2021年7月3日放送)でも取り上げられており、下記YouTubeで再生後6分からその問題が紹介されています。

以下に、一時支援金の不備通知及び「不備ループ」の原因と対処法を解説します。

不備通知及び不備ループに対する対処法

不備通知の原因は個別具体的となるので、下記に一例を示しますがそれだけにとどまらず、様々なケースが生じ得ます。

(1)確定申告書の不備
事前確認を通過している確定申告書の控えであれば、通常は要件を満たしています。要件を欠く場合は登録確認機関に見落としがあったか、あるいは「一部確認」で確定申告書控えのチェックなく事前確認を完了した方に起こり得る問題です。

確定申告書のそろえ方については、下記記事に整理してありますのでご参照ください。
一時支援金・月次支援金における確定申告書のそろえ方

(2)通帳の写しの不備
紙通帳の場合に、申請画面の案内どおりに正確な情報を入力しても不備が出ることがあります。例えば、通帳表紙の名義が手書きされている場合です。この場合は他の印字されている通帳に代えればよいです。
また、ネット銀行の場合には紙通帳と違う対処が必要となります。具体例として、PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)の解説ページを添付しますのでご参照ください。
https://www.japannetbank.co.jp/news/general2020/200716.html

(3)宣誓・同意書の不備
宣誓・同意書も事前確認を通過していれば、一部確認を受けた方以外は問題ないはずですが、不備通知を受けている方の中に異なる様式でアップされている申請者がいるのも事実です。実際に、当職が事前確認に必要な書類を案内したときも、宣誓・同意書は所定の様式を一時支援金ホームページからダウンロードして印刷する必要があることの説明は必須でした。
一時支援金申請用の宣誓・同意書は下記の書式となります(月次支援金は様式が異なります)。
宣誓・同意書(一時支援金)

(4)取引先情報一覧の不備
取引先情報一覧も所定の様式で提出しなければなりません。個人事業者用と法人用は異なるので、下記様式をご利用ください(月次支援金申請では直接入力する方式となっているので、下記様式は不要です)。

取引先情報一覧(法人用)

取引先情報一覧(個人事業者用)

なお、所定の様式で不備が出ている場合は記入方法・内容が誤っており、これはケースにより対応が異なります。

(5)一時支援金事務局側の不備(「不備ループ」)
本来、要件を満たしている書類に対し、一時支援金事務局の審査基準に基づき不備が出る場合があります。
中には一時支援金事務局の判断の誤り等によることもあり、また、「疑いをかけられること」により本来申請には不要な書類提出が求められ不備通知が乱発される事象が、いわゆる「不備ループ」と呼ばれる問題です。
これも個別事案に応じて、不備とされた書類が要件を満たしていることの「説明文」や「追加書類」等を添付して対処する必要があります。不備通知にある書類提出を事務局が求めている「原因」があり、それは通知において説明されないため、その原因を見抜いて対処していくことも求められます。
その不備通知の原因に対し、いかに説明文・追加書類等による証明を説得的に行うかにより結論は異なり、実際に当事務所は不備ループを含む不備通知に対する申請を代行し通した実績を有します。
他方で、不備通知後の再申請の連続により相当長期に申請期限を延長している状態に入っており、かつ、申請画面がロックされている場合、通常は再申請が通らなくても不備通知が届き再度の申請が可能となるはずが、再申請に対して不給付決定が出されてしまうことがありますので覚悟も必要となります(残念ながら、当事務所も2021年10月末に相談を受けた「その事業形態には存在しない書類提出を求めてくるケース」で、かつ、申請画面がロックされている事案において、事前に一時支援金事務局相談窓口に連絡し、担当者及び担当者を介して上席と意見のすり合わせも行った上、同年11月12日に事業性の認定を補う新たな資料を添付しての再申請をしたにも係わらず、同年月15日に不備通知ではなく不給付決定が下された事件を1件経験しています)。

重要なお知らせ(月次支援金「不備ループ対応中止」から「再開」の件)

当事務所は、一時支援金から不備ループ対応を行っており、当サイトで公表してきましたが、月次支援金においてもさらに過酷な不備ループが生じており、その対応は公表していませんでしたが依頼があれば受任してきました。
しかし、2021年12月20日をもって、月次支援金の不備ループ対応を中止せざるを得ない状態となりましたが、様々な要望を受けて、相談業務(有料)に特化することで対応を開始しました。
具体的な内容は下記記事を参照ください。
月次支援金「不備ループ」対応等の相談業務の再開(有料)

当事務所における一時支援金「不備ループ」への対応

まず、ログインIDとパスワードを教えていただければ、当事務所にて無料で不備内容をチェックします。
その後、申請が通る可能性がある場合には、事案に応じて不給付決定が出るリスクもご説明の上、申請手続きを当事務所に依頼すべきかどうかを判断していただきます(特に、不備ループの連鎖により相当長期間が経過し、かつ、申請画面がロック状態になっている場合は、再申請に対する不給付決定の覚悟も必要となります)。
なお、2021年11月後半あたりから、マイページに申請期限を示し、それまでに不備を解消しないと不給付決定を下す旨の通告が出されるようになっており、この期限に対する再延長は認めない仕様となっています。
よって、申請期限が表示されてしまっており、期日が間近に迫っているときは当事務所においても受任できないことがあります。

さて、不備ループに対する報酬額は、給付額の3~10%+税が基本で、無事に給付されて初めて報酬が発生します(給付に至らなければ無報酬)。
また、特別に書類作成等が必要な場合には、1書類につき5,500円(税込)程度の加算をすることもありますが、これも完全成功報酬なので給付に至らなければ報酬請求をすることはありません。
なお、不備や必要書類の量が膨大である等、事件の性質により報酬額がさらに上がることはあります。

上記報酬額は支援価格に設定しており、当事務所にかかる負担からして損失は出ても、利益はほぼ生じません。
事前確認を無料で実施し、当事務所で事前確認を受けた方には申請に関する相談まで無料で行った延長上の取組みといえます。

当初より、1者でも多くの事業者に一時支援金を受給してもらうよう努力してきました。
「不備ループ」だけでなく、今回の制度に対して思うところや納得のいかない点は行政手続きのプロとして多々ありますが、今は当職にできることをしていきたいと考えています。

現状では解消できない不備について

申請期限後には解消できない不備があり、それは個人事業主の方でマイページを作成した際、「事業所得」と「主たる収入が雑・給与所得」の選択を誤ってしまった方です。
具体的には、確定申告書に事業所得がある方は給与等の所得を得ていても「個人事業者(事業所得)」でマイページ作成しなければなりませんが、それを間違えたまま申請期限を経過した結果、書類不備を克服できない「不備ループ」に陥ってしまいます。
なぜなら、「事業所得」と「主たる収入が雑・給与所得」の選択を間違えた場合、その切り替えが同一の画面内ではできず、新たにIDを発行しないとならない「制度上の不備」があり、申請期限後には新IDの登録ができないからです。
こうして、本来は受給する権限を有する事業者の申請が通らないという事態が生じています。

この問題については、残念ながら本稿執筆時点で明確な対処法がありません。一刻も早く、同一のID内で申請区分の切り替えができるよう改善すべきと考えます。
また、当職もこの点は中小企業庁の窓口を通し、行政書士として名乗った上で、申請区分の誤りにより不備ループに陥っている方の現状を訴えつつ改善要望を出しています。具体的には、「補正を許さない仕組みは行政手続きの原則に反している」と直訴しました。
そして、当職は「主たる収入が雑・給与所得」のIDであっても、提出書類を「事業所得」の観点から審査することを求める再申請を代行し、可能な限り、困窮する事業者のためにできることを実施しました。しかし、当該再申請後、2週間の経過期間もなく当日中に不給付決定を出す判断がなされるほど、申請区分の誤りに対する補正を許さない強固な態度を事務局側は貫きました。

以上より、申請区分の誤りによる不備の解消は現状では困難であることが確定してしまいました。

この問題に対しては、事務局は不給付決定を取り消し、申請区分の切り替え又は新IDの発行を認める等し、再度の申請を認めるべきと考えます。