2022年4月8日
ビジネス法務エグゼクティブ
(ビジネス実務法務検定1級)
特定行政書士 安平 一樹

本連載について

本投稿は、事業復活支援金申請をするにあたり注意すべき事項として、「不備ループ」に特化した解説を連載で行い、最終的にはその内容に具体的検討を加筆したものを電子書籍化するためのものです。
書籍出版前に内容の一定割合を公開することは、コロナ禍に困窮する事業者に救済の手が行き渡るようにするためであり、かつ、書籍の執筆・出版が遅延した際にも事業復活支援金の申請に間に合うよう情報提供を可能な限り行うことをねらいとしています。
また、申請期限の関係で火急の執筆となり、誤植があったとしても原則として修正せず書き進めていきますので、より正確な内容を求める方は電子書籍を参照ください。
なお、本連載及び本書は申請者を基準としつつ、登録確認機関や申請代行を業とする行政書士をも対象とした高度な内容まで平易に記述するため、それらを読んだ申請者は、本書等を未読の行政書士や登録確認機関よりも不備ループ対応力が身につくと考えます。

電子書籍の執筆及びその内容を無料公開することの目的につき、詳細は下記記事を参照ください。
【電子書籍の予告】事業復活支援金申請の注意点~不備ループに陥らないために~

本連載を最初から読みたい方はこちら

さて、連載2回目は月次支援金の不備ループ3段階審査のうち、第1審査を引用して解説します。

月次不備ループ 第1審査

まず、次に引用する「GM1115」等の不備通知が、「不備ループ」に陥ったことを告げる最初の通知となります。

GM1115:ご提出いただいた書類では、給付要件を満たさないおそれがあるため、以下1~4の追加証憑の提出をお願いします。提出時には「その他書類」にアップロードしてください。

1.売上および経費の支払が確認できる金融機関発行の書類
※提出いただく期間は【2019年1月から直近まで】です。
※提出いただく金融機関発行の書類の用途が【売上】、【経費】、【売上と経費に共通】のいずれかに該当するかのメモを添付してください。

2.事業における売上および経費にかかる帳簿
※提出いただく期間は【2019年1月から直近まで】です。
※①取引日付、②取引先、③金額の3点が確認できるものをご提出ください。

3.事業における売上が確認できるすべての請求書・領収書等
※提出いただく期間は【2019年・2020年の対象月同月】です。

4.事業における売上および経費の支払が確認できるすべての請求書・領収書等
※提出いただく期間は【2021年の直近2か月】です。

上記の書類を提出いただいた後、「月次支援金に係る取引先情報一覧」の「2.申請者の該当区分」で選択した区分にしたがって、所在地や事業に応じた保存書類の提出をお願いさせていただく場合がありますので、あらかじめご了承ください。

【保存書類の提出に当たりご確認ください】
1.書類提出に当たっての留意事項
□上記1および2をご提出いただく際は、該当する箇所にマーカー等で印をつけてください。
□提出時は書類がぼやけている、見切れているなどの不備がないことをご確認ください。
以下省略


<解説>
帳簿書類等の期間については月次支援金に合わせた内容なので、事業復活支援金では、同支援金用に変形した不備通知に合わせた期間になると考えられます。
この「GM1115」のほかに、前回に画像を添付した「GM9498」や「GM6569」もあり、同趣旨の不備通知となります。この不備通知が出発点となります(以下、「最初の不備ループ通知」とします)。
これらの書類を「不備通知どおりにすべてそろえること」及び「適切にマーカーをひいてわかりやすくすること」が求められます。さらに「不備通知以上の内容が暗に求められていること」もあります。
この不備通知に対して不足があると次のように様々な不備通知が届きますが、それらはまだ「第1段階」に留まっている状態です。

なお、以下では不備通知の冒頭や文末等の記載、複数ある不備通知でも内容が重複しているものは省略して引用し、解説内容の重複も割愛します。

MG8151◆経費が確認できる金融機関発行の書類
経費が確認できる金融機関発行の書類の提出が確認できませんでした。
2019年1月から直近までの全期間の経費が確認できる金融機関発行の書類を【すべて】ご提出ください。
※金融機関発行の書類とは、通帳の写し、ネットバンクのスクリーンショット、取引推移表等です。

MG8993◆帳簿(記載項目)
提出いただいた売上が確認できる帳簿において、①取引日付、②取引先、③金額のいずれかの項目が記載されていません。①~③がすべて確認できる帳簿をご提出ください。

MS2933◆直近月の取引(経費)
提出いただいた経費にかかる請求書等および金融機関発行の書類から、直近2か月に経費の支払があることが確認できませんでした。上記が確認できる書類をご提出ください。


<解説>
まず、「◆経費が確認できる金融機関発行の書類」とありますが、これは最初の不備ループ通知(1.売上および経費の支払が確認できる金融機関発行の書類※提出いただく期間は【2019年1月から直近まで】)に対し、再申請で提出した通帳の写し等から「経費の支払」が「全期間」につき確認できなかったため、この不備通知が届いていると考えられます。
つまり、請求書等に対する通帳への振込みのように「売上」は確認できたとしても、経費の支払が通帳の履歴に存在しなかったり、それが全期間にわたり継続してなかったときにこの不備通知が告げられます。もっとも、事業内容からなぜ存在しないのかを合理的に説明することで、経費支払の証明の対象を請求書・領収書等まで拡大することは可能です(後述する不備ループ通知参照)。
次に、「◆帳簿」ですが、一時・月次支援金申請においては月毎の売上がわかる売上台帳の提出で通常の申請はよかったのですが、不備ループ通知ではより詳細な確認が求められています。この帳簿に関する要件(①取引日付、②取引先、③金額の記載)は、事業復活支援金においては当然の前提となっており、月次支援金までの事務局側の経験等が反映されたものといえます。
また、「◆直近月の取引(経費)」については、証明資料の対象が金融機関発行の書類のみでなく請求書等にも拡大されており、「直近まで事業を継続して行っているか」を柔軟にチェックする要件と考えられます(よって、一部、不足を追加資料の提出及び解釈で補えたケースがありますが、それは書籍にて示します。)。

◆帳簿(売上)(MS2631)
売上が確認できる帳簿の提出が確認できませんでした。
2019年・2020年の各月(計24か月)および2021年の1月から直近までのすべての売上が確認できる帳簿(①取引日付、②取引先、③金額の3点が確認できるもの)をご提出ください。
※2019年1月以降に開業し、上記期間の売上にかかる帳簿が存在しない場合は、開業日から直近までの売上が確認できる帳簿(①取引日付、②取引先、③金額の3点が確認できるもの)をすべてご提出ください。

<解説>
これも最初の不備ループ通知(2.事業における売上および経費にかかる帳簿※提出いただく期間は【2019年1月から直近まで】※①取引日付、②取引先、③金額の3点が確認できるもの)に対して提出した帳簿に不足があったための不備通知ですが、先の帳簿に関する不備通知や事業復活支援金申請での改正点からもわかるとおり、この不備ループ通知からも審査の出発点として帳簿(売上台帳)が非常に重要であることが読み取れます。
ただし、この不備通知の不当な点は、開業前の帳簿が存在しないことは認めても、「開業直後、事業が軌道に乗るまでの一定期間の売上がない」ため売上台帳に取引が記帳されていないことを認めない方向に作用してしまうことです。実際に、開業前や開業直後の売上がないことを理由に不備ループから抜け出せなくなったケースもあります(会社設立前の確定申告書類等が存在しないことを理由に不備ループになった事案を一時支援金において解消していますので、それも書籍では示します。)。

◆帳簿(売上:2021年)(MG2529)
2021年の売上が確認できる帳簿が不足しています。
2021年1月から直近まですべての売上が確認できる帳簿(①取引日付、②取引先、③金額の3点が確認できるもの)をご提出ください。

<解説>
やはり最初の不備ループ通知(2.事業における売上および経費にかかる帳簿※提出いただく期間は【2019年1月から直近まで】※①取引日付、②取引先、③金額の3点が確認できるもの)に対し、売上に関する帳簿の不足があったことによる不備通知ですが、長引くコロナ禍の中で、2021年に入ってから売上がない月がある場合にこの不備通知を解消できないおそれがあります。

◆経費が確認できる領収書等(2020年)(MG3137)
2020年1月~12月の12か月間について、事業経費(水道光熱費や通信費)を支払ったことがわかる領収書等が一部不足しております。不足する期間について、上記がわかる書類を【すべて】ご提出ください。
※コンビニ等の第三者の領収日付印が明瞭に確認できるものをご提出ください。
※個人事業者の場合、屋号・雅号宛てのものをご提出ください。

◆経費が確認できる領収書等(2021年)(MG2632)
2021年1月~直近について、事業経費(水道光熱費や通信費)を支払ったことがわかる領収書等が一部不足しております。不足する期間について、上記がわかる書類を【すべて】ご提出ください。
※コンビニ等の第三者の領収日付印が明瞭に確認できるものをご提出ください。
※個人事業者の場合、屋号・雅号宛てのものをご提出ください。


<解説>
まず、最初の不備ループ通知(1.売上および経費の支払が確認できる金融機関発行の書類※提出いただく期間は【2019年1月から直近まで】)に対する再申請で、2020年以降は金融機関発行の書類から経費の支払が確認できなかったため、領収書等に証拠書類の範囲が拡大されていると考えられます。また、最初の不備ループ通知で求められていた「4.事業における売上および経費の支払が確認できるすべての請求書・領収書等※提出いただく期間は【2021年の直近2か月】」で、再申請において経費については不足があったため、経費の支払の証明につき、2020年以降及び2021年直近2か月を総合して発せられた不備ループ通知で、証明の不足は決して許さず組み合わせて発せられる不備ループ通知の特徴が読み取れます。
次に、水道光熱費等の支払につき、たとえば個人事業者が自宅の一部を事業所としている場合にその名義は個人名となっており、また、事業所を賃貸している個人事業者であっても屋号を付していないことも多いのが個人事業主の実情です。
しかし、この不備通知では個人事業者は水道光熱費等の支払につき、「屋号・雅号宛て」のものを提出することを求めており、これは「絶対の要件」のように解釈され、個人名宛てではあるものの事業の経費である説明や補足資料の提出をしても原則として補うことができません(実際の事例は書籍で示します。)。
よって、この「屋号・雅号宛て」の領収書等がなかったために、合理的な証明資料及び説明の提出をしても不備ループから抜け出せず不給付決定となった実例を当職も経験しています。

◆直近月の取引の確認(経費)(MG9498)
提出いただいた【直近2か月の経費にかかる請求書等】に記載された名義が、申請者名(屋号を含む)または法人名と整合しません。
上記が整合する書類をご提出ください。
※請求書等とは、請求書、納品書、賃貸借契約書、公共料金の請求書、保険料の支払書などです(領収書は不可)。
※個人事業者の場合、屋号・雅号宛てのものをご提出ください。
※クレジットカード払いの場合、カードで支払った事を示す書類、当該書類の取引が含まれるカード会社からの請求書をご提出ください。

<解説>
最初の不備ループ通知(4.事業における売上および経費の支払が確認できるすべての請求書・領収書等※提出いただく期間は【2021年の直近2か月】)に対して提出した直近2か月の経費にかかる請求書等の宛名が個人名であったことから発せられた不備ループ通知です。やはり経費にかかる請求書等につき、個人事業者の場合に「屋号・雅号宛て」のものを厳格に求めており(問題点は上記解説のとおり)、証明資料として自身で発行できる領収書は改ざんのおそれがあるので不可となっています。

◆複数回の取引の確認(経費:2019年)(FG3337)
2019年の対象月同月の経費にかかる請求書等から、同月に複数回の取引が行われていることが確認できませんでした。
上記が確認できる資料をご提出ください。請求書の合計金額をご確認ください。
※請求書等とは、請求書、納品書、賃貸借契約書(自宅兼用は不可)、公共料金の請求書、保険料の支払書などです(領収書は不可)。
※個人事業者の場合、屋号・雅号宛てのものをご提出ください。
※クレジットカード払いの場合、カードで支払った事を示す書類、当該書類の取引が含まれるカード会社からの請求書をご提出ください。
※2019年の対象月同月以降に開業したことにより、対象月同月の経費にかかる請求書等を提出できない場合には、対象月同月に近い任意の1か月における書類をご提出ください。

◆複数回の取引の確認(経費:2020年)(FG1519)
2020年の対象月同月の経費にかかる請求書等から、同月に複数回の取引が行われていることが確認できませんでした。
上記が確認できる資料をご提出ください。
※請求書等とは、請求書、納品書、賃貸借契約書、公共料金の請求書、保険料の支払書などです(領収書は不可)。
※個人事業者の場合、屋号・雅号宛てのものをご提出ください。
※クレジットカード払いの場合、カードで支払った事を示す書類、当該書類の取引が含まれるカード会社からの請求書をご提出ください。
※2020年に開業された方は、対象月同月と、それ以降の対象月に近い任意の1か月の書類をご提出ください。なお、対象月同月の経費にかかる書類の提出が難しい場合は、対象月同月に近い任意の計2か月間における上記の書類をご提出ください。


<解説>
これは最初の不備ループ通知(1.売上および経費の支払が確認できる金融機関発行の書類※提出いただく期間は【2019年1月から直近まで】)に対し、経費の支払が確認できる金融機関発行の書類を全期間分提出したけれども、毎月の支払等、全期間に継続して経費の支払が確認できなかった等の理由で、経費の支払が2019年・2020年の「対象月同月」に「複数回」あったことの証明を求めることで事業性を認定しようとする不備ループ通知と考えられます(「対象月」とは支援金申請の対象期間となる売上が減少した月)。そのため、金融機関発行の書類よりも証明資料の対象を拡大し、「対象月同月」の「複数回」の経費の支払の証明が求められています。
よって、対象月と同月に経費の支払がなかった場合や、その支払が複数回なかったときは本不備通知を解消できません(開業した年についてはやや対象月に関する要件が緩和されています)。この「対象月同月」・「複数回」という組み合わせは事務局が事業性を判断する上で使う考え方で、「継続して事業を行っているか」をみる要件となっていると考えられます。しかし、これは組み合わせ方により真正な事業者を振り落とす方向に作用するので、その運用には注意が必要です。具体例及びあるべき審査基準については書籍で示します。
賃貸借契約書は「自宅兼用は不可」とされていることからも、自宅を事業所としている多くの個人事業主にとって厳しい内容となっています(自宅兼事務所は事業者として認めないというのではなく、自宅の賃貸借契約書では事業性の判断が書類上困難だからという理由なのだと思われます)。なお、上のFG3337は「賃貸借契約書(自宅兼用は不可)」とある一方で、下のFG1519は単に「賃貸借契約書」となっていますが、両方とも「自宅兼用は不可」と解釈されます。もっとも、この点は対策の余地があり、詳しくは書籍で示します。

GS5054◆2019年・2020年の対象月同月の売上が確認できるすべての請求書・領収書等

<解説>
この売上に関する不備通知の内容は、最初の不備ループ通知(3.事業における売上が確認できるすべての請求書・領収書等※提出いただく期間は【2019年・2020年の対象月同月】)とまったく同じ内容ですので、本不備通知に関する部分のみ再申請で書類が不足していたので発せられたものと考えられます。ここで重要なことは、この不備通知には「対象月同月」のほかに「複数回」という要件が第2審査につながるかたちで隠されています。詳しくは第2審査で解説します。

◆請求書等(売上:2019年)(FA2328)
2019年の対象月同月の売上にかかる請求書等の提出が確認できませんでした。
2019年の対象月同月の売上にかかる、【すべて】の請求書等をご提出ください。

※2019年中に開業したことにより、対象月同月の売上にかかる請求書等を提出できない場合には対象月同月に近く、また売上がある任意の1か月における書類をご提出ください。


<解説>
最初の不備ループ通知(3.事業における売上が確認できるすべての請求書・領収書等※提出いただく期間は【2019年・2020年の対象月同月】)に対し、2019年については確認できなかったことによる不備通知です。そのため、2019年中に開業したことにより対象月同月の売上にかかる請求書等が提出できない場合の提出書類が示されています。

◆請求書等(売上:2019年)(FA1216)
2019年の対象月同月の売上にかかる請求書等の提出が確認できませんでした。
2019年の対象月同月の売上にかかる、【すべて】の請求書等をご提出ください。

◆請求書等(売上:2020年)(FA2125)
2020年の対象月同月の売上にかかる請求書等の提出が確認できませんでした。
2020年の対象月同月の売上にかかる、【すべて】の請求書等をご提出ください。

なお、請求書・領収書等の代替書類としては末尾記載の代替書類に加えて以下も認められます。
・各加盟店のクレジット振込通知書
・キャッシュレス決済の売上一覧及び支払通知書等
・その他交通系電子マネーの支払通知書 など
※いずれも通帳と紐づいていることが条件です。


<解説>
最初の不備ループ通知(3.事業における売上が確認できるすべての請求書・領収書等※提出いただく期間は【2019年・2020年の対象月同月】)に対して不足があったことによる不備通知です。
ここで重要なことは、「請求書・領収書等の代替書類」として認められるものが示されており、そこから事務局の考え方・審査基準を読み取ることができます。これは事前確認及び事業復活支援金申請において不備ループ発生率を下げるための方法に活用できるものとなります。責任の観点上、詳しくは書籍において示しますが、当事務所では事前確認段階からこの点を意識した対応を行っています。

◆金融機関発行の書類、請求書等(経費:2019年)(GG3943)
2019年の対象月同月の経費について、提出された金融機関発行の書類、請求書等から、同期間に複数回の取引があることが確認できませんでした。
上記が確認できる書類をご提出ください。
※振込手数料等により差額がある場合、その旨が分かる書類をご提出ください。
※書類を提出される際は、①取引日付、②取引先、③金額が一致することが確認できる箇所にマーカーなどで印をつける、ナンバリングをするなどのうえで、ご提出ください。
※2019年の対象月同月以降に開業したことにより、対象月同月の経費の支払がない場合には、対象月に近い任意の1か月における書類をご提出ください。
※請求書等とは、請求書、納品書、賃貸借契約書、公共料金の請求書、保険料の支払書などです(領収書は不可)。
※個人事業主の場合、屋号・雅号宛てのものをご提出ください。
※クレジットカード払いの場合、カードで支払った事を示す書類、当該書類の取引が含まれるカード会社からの請求書をご提出ください。
※金融機関発行の書類とは、通帳の写し、ネットバンクのスクリーンショット、取引推移表などです。
※通帳の写しのほか、現金によるATM振込の明細、コンビニ決済の明細、クレジットカードや決済サービス、集金代行サービス等に関する支払明細書も提出いただけます。

◆金融機関発行の書類、請求書等(経費:2020年)(GG2933)
2020年の対象月同月の経費について、提出された金融機関発行の書類、請求書等から、同期間に複数回の取引があることが確認できませんでした。
上記が確認できる書類をご提出ください。
※振込手数料等により差額がある場合、その旨が分かる書類をご提出ください。
※書類を提出される際は、①取引日付、②取引先、③金額が一致することが確認できる箇所にマーカーなどで印をつける、ナンバリングをするなどのうえで、ご提出ください。
※2020年に開業された方は、対象月同月と、それ以降の対象月に近い任意の1か月の書類をご提出ください。なお、対象月同月の経費にかかる書類の提出が難しい場合は、対象月同月に近い任意の計2か月間における上記の書類をご提出ください。
※請求書等とは、請求書、納品書、賃貸借契約書、公共料金の請求書、保険料の支払書などです(領収書は不可)。
※個人事業主の場合、屋号・雅号宛てのものをご提出ください。
※クレジットカード払いの場合、カードで支払った事を示す書類、当該書類の取引が含まれるカード会社からの請求書をご提出ください。
※金融機関発行の書類とは、通帳の写し、ネットバンクのスクリーンショット、取引推移表などです。
※通帳の写しのほか、現金によるATM振込の明細、コンビニ決済の明細、クレジットカードや決済サービス、集金代行サービス等に関する支払明細書も提出いただけます。


<解説>
これも最初の不備ループ通知(1.売上および経費の支払が確認できる金融機関発行の書類※提出いただく期間は【2019年1月から直近まで】)に対し、経費にかかる支払を金融機関発行の書類で全期間提出したものの不足があるとして、さらに2019年・2020年対象月同月に複数回の取引の証明を求めて発せられた不備通知で、複数回の経費の支払を証明しやすいよう、対象となる証拠資料が経費の支払先からの請求書等まで拡大されていることも、すでにみた不備ループ通知と同じです。
この不備ループ通知は、月次不備ループでも事業復活支援金が始まった後のもので新しいため、提出する書類に関してかなり詳しく説明が付されている点が特徴です。
この提出書類に関する説明は、事務局の考え方を知る上で有益であり、単に「賃貸借契約書」と記載されているものはすでに解説したとおり原則として「(自宅兼用は不可)」という見えない要件があること等も、事務局の審査基準を知る上で重要です。

以上が月次不備ループ第1審査となります。
この第1審査を完全にクリアして初めて次の第2審査に進めます。

月次不備ループ第1審査の分析

まず、不備ループの始まりを告げるGM1115等により様々な事業に関する書類提出を求めることで、「架空の事業者」でないかに始まり、「実際に事業を行ってきた者か」を審査していると考えられます。
そのため、提出書類が膨大で細部にわたる内容となっています。これだけの書類を偽造することは困難であるため、架空の事業による申請を防止する効果が高い一方、真正な事業者に過度の負荷をかけています。

この不備通知は「相当に疑わしい申請者」に発せられるならば妥当と評価できますが、問題点は「確定申告書等の申請書類や申請内容に不正確さがある通常の事業者」も巻き込んで通知されてしまうことにあります(不備ループが生じる原因や傾向については後に解説します)。
さらに、各不備通知に対する解説でも示したように、事務局が設定した基準を厳格に適用しすぎるために「事業性を判断する」という不備通知の趣旨・目的に反し、真正な事業者が不正な事業者と扱われ、不給付決定となる事態が生じています。
この点に関する「あるべき審査基準」は書籍で示すとして、「申請者は最初の申請時点で疑われないように申請内容を適切に整えること」が重要であることが再確認できます。すでに解説したように、不備ループに陥るかどうかは最初の申請で原則として決まるからです。

なお、事業復活支援金においては同支援金に合わせて変形させた不備ループ通知が用いられると考えますが、月次不備ループの分析から「事務局の考え方」を読み取った上で「最初の申請を整えてする」ことで、不備ループ発生率を下げることができます。つまり、本連載及び書籍の目的は、脱出困難な不備ループに陥った後の対処法を示すことではなく、不備ループに陥らないようにすることだからです(書籍での不備ループの分析や事例の検討により、結果的に不備ループ後の対応力は上がりますが、それが主目的ではありません)。
詳しくは書籍で示しますが、3段階審査で不備通知の多い月次不備ループは、事務局の考え方・審査基準を理解するための分析材料として最適のものといえるでしょう(もっとも、この資料には、不備ループに苦しんだ結果、不給付決定となった事業者の痛みが実在していることを忘れてはなりません)。

次回の内容及び書籍案内

次回は、月次不備ループ3段階審査のうち、第2審査について同様に、実際の不備通知内容を引用しつつ分析及び解説を行います。
連載3回目(次回)「不備ループ」第2審査の解説

連載1回目(前回)「不備ループ」の定義及び仕組み

本連載内容を整理し、具体的な検討やケースを用いた解説を加筆した上で、申請上の注意点からあるべき審査基準を示す電子書籍については下記記事を参照ください。
事業復活支援金申請の注意点~「不備ループ」に陥らないために~

当事務所の事前確認

当事務所は業として支援金申請を行える行政書士として、これまでの事前確認、申請代行及び不備ループ対応の経験を活かし、事業者に合わせて申請上の注意点までサポートした事前確認を実施しています。
詳しくは下記記事をご参照ください。
事業復活支援金の事前確認

執筆者紹介

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