2022年4月17日
ビジネス法務エグゼクティブ
(ビジネス実務法務検定1級)
特定行政書士 安平 一樹

本連載について

本投稿は、事業復活支援金申請をするにあたり注意すべき事項として、「不備ループ」に特化した解説を連載で行い、最終的にはその内容に具体的検討を加筆したものを電子書籍化するためのものです。
書籍出版前に内容の一定割合を公開することは、コロナ禍に困窮する事業者に救済の手が行き渡るようにするためであり、かつ、書籍の執筆・出版が遅延した際にも事業復活支援金の申請に間に合うよう情報提供を可能な限り行うことをねらいとしています。
また、申請期限の関係で火急の執筆となり、誤植があったとしても原則として修正せず書き進めていきますので、より正確な内容を求める方は電子書籍を参照ください。
なお、本連載及び本書は申請者を基準としつつ、登録確認機関や申請代行を業とする行政書士をも対象とした高度な内容まで平易に記述するため、それらを読んだ申請者は、本書等を未読の行政書士や登録確認機関よりも不備ループ対応力が身につくと考えます。

電子書籍の執筆及びその内容を無料公開することの目的につき、詳細は下記記事を参照ください。
【電子書籍の予告】事業復活支援金申請の注意点~不備ループに陥らないために~

本連載を最初から読みたい方はこちら

さて、連載6回目は不備ループが生じる原因のうち「事前確認」について解説します。

事前確認の問題

まず、前回みたように持続化給付金、家賃支援給付金において「不正受給」が起きたことから、一時支援金から「事前確認」という制度が導入され、支援金申請者は事前に事業性及び給付要件の形式的理解の確認を面談(オンライン形式含む)で受けなければならなくなりました。
これは、通常の行政手続では例のない仕組みで、実際に、一時支援金・月次支援金と同趣旨の支援金を「地方自治体」が事業者に対して実施したときは事前確認を受ける必要はありませんでした。

この事前確認を担う登録確認機関となるに際し、特に研修や試験はなく、行政書士や税理士等がマニュアルに沿って実務経験を活かしその役割を果たすことが期待されましたが、「事前確認を受けられない」・「高額な手数料を請求された」という問題も生じました。その点については一時支援金時点のものですが、下記当職執筆の解説記事を参照ください。
一時支援金における事前確認の問題点の解説

そもそも、事前確認(全部確認)には事案に応じてどのように対処すべきか不明な点も多く、登録確認機関に求められる判断や責任は重く、要する時間からしても、とても無料(1受給者につき1,000円の事務手数料)でできるようなものではありませんでした(事業復活支援金からは1件につき全部確認2,000円・一部確認1,000円の事務手数料に変更されています)。
しかし、当職は社会貢献を目的として「1件の依頼も断らない」を信念に、一時支援金270者・月次支援金91者、計361件の事前確認(すべて全部確認)を無料で実施し、やるからには無料であっても最善を尽くす覚悟で臨みました(事業復活支援金からは不備ループ対策等の申請サポートまで徹底し、高い受給率を維持するため事前確認を有料に切り替えています)。

ところが、2021年5月28日時点(一時支援金)で、登録確認機関の中に「不正な事前確認」を行った者(行政書士)が1名いたことが発覚し処分され、事前確認に対する信頼が揺らぎました。
下記一時支援金事務局ホームページでその事件に関する開示がなされています。
不適切な事前確認を実施した登録確認機関に対するアカウント停止措置等について

本公開情報からは、どのような不正な事前確認がなされたのか明らかではありません(予測としては、まったく事前確認を行わずに手続きをしたことにしたのではないかと思われます)。
ただし、当該サイトにおいて不正な登録確認機関が発覚したのは事務局による「事前確認データの分析等」がなされた結果であることは公表されています。

一時支援金時点で不正な事前確認が生じた後も、事前確認の仕組みが維持されていることからすれば、不正な申請を防止する効果は一定の割合で期待できると事務局も考えていることがわかります。
もっとも、上記のとおり、事前確認には不安定な部分があることも事実ですし、事前確認はあくまで「形式的な確認」ですので、事務局はさらに不正受給防止のために「不備ループ」と呼ばれるようになる審査基準を採用し、変遷させながらその審査方法を維持しています。
つまり、事前確認については事務局も不正な申請を予防する一定の効果を認めつつも、①登録確認機関による事前確認のみでは不正な申請を防ぎ切れず、また②事前確認は形式的な審査に過ぎないことから、事務局独自の不正受給防止のための審査基準として「不備ループ」とされる手法も併用していると考えられます。

申請内容と事前確認との整合性

上記のとおり、事務局は「事前確認のデータ分析等」を行っていますが、これは事前確認が適切になされているかといった登録確認機関への監視のためだけではないと解します。
つまり、事前確認は受けて通過すれば終わりではなく、審査段階においても、申請者の申請内容と事前確認内容の一致や整合性を事務局はチェックしていると考えられます。

なぜならば、不正な事前確認かどうかは事前確認の入力内容だけでは判定できず、申請者の申請内容と照らし合わせて初めてわかるからです。
よって、不正な事前確認を行った登録確認機関はその監視を主目的としたデータ分析で発覚したのではなく、申請者の申請内容に不審な点がないかの審査を事前確認内容も参照しながら行う中で、当該登録確認機関の事前確認は申請者の申請内容との不整合が多数に及んだため抽出されたものであると当職は推測しています。

すでに、登録確認機関の事前確認内容により、受給率に差が生じ得ることは解説しましたが、事前確認のどのような点が、申請内容と関連して影響すると考えられるかは後述し、詳しくは書籍で示します。
ただし、あくまで審査の主要部分は申請者自身による申請内容であり、事前確認は全体的な整合性をみる程度のものと分析しています。

改良された事前確認

事前確認の方法は、一時支援金から月次支援金まで同じものでしたが、事業復活支援金からは変更点が複数あり、それは「改良」と評価できます。
つまり、不正な申請を防ぐ効果がそれまでの事前確認よりも高く、確実性の高い確認基準となっています(一方で、登録確認機関に求められる能力や負担は増えました)。

本来はどのように事前確認の内容が変更され、それがどう影響するのかまで解説するのが好ましいですが、事業復活支援金申請に直接的に影響する内容、具体的にはこれから事前確認を受けて申請する方や、一時・月次の受給歴があり申請する方のニーズに絞り迅速な執筆を最優先にするため割愛します。

次回の内容及び書籍案内

次回は不備ループが生じる原因に関する3回目で、申請内容及び審査体制を一体的に整理して解説します(次々回がいよいよ申請における注意点を記述する最終回となります)。
連載7回目(次回)「不備ループ」が生じる原因③申請内容及び審査体制

連載5回目(前回)「不備ループ」が生じる原因①社会的背景

本連載内容を整理し、具体的な検討やケースを用いた解説を加筆した上で、申請上の注意点からあるべき審査基準を示す電子書籍については下記記事を参照ください。
事業復活支援金申請の注意点~「不備ループ」に陥らないために~

当事務所の事前確認

当事務所は業として支援金申請を行える行政書士として、これまでの事前確認、申請代行及び不備ループ対応の経験を活かし、事業者に合わせて申請上の注意点までサポートした事前確認を実施しています。
詳しくは下記記事をご参照ください。
事業復活支援金の事前確認

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