2022年6月18日
ビジネス法務エグゼクティブ
(ビジネス実務法務検定1級)
特定行政書士 安平 一樹

一時支援金から新たに導入された制度である「事前確認」。
当職が初めて一時支援金の事前確認を実施したのは2021年4月6日、そして事業復活支援金の事前確認期限である2022年6月14日が過ぎ、1年以上続いた登録確認機関としての事前確認業務をようやく終えることができました。

感想は、「精神的にも肉体的にも疲れた」ということと、「それでもやってよかった」ということ。

コロナ禍で困窮する事業者に貢献するため、自身の顧問先や取引先以外の事前確認も地域を限定せずに受け付けることにし、「1件の依頼も断らない」という信念を最後まで貫きました。

2021年4月、事前確認を初めたばかりの頃は、事前確認の予約がない日もあり、多い日でも2~3件の事前確認(無料)を業務と併行して実施でき、穏やかな時間を過ごしていました。
しかし、2021年5月になると、当初の一時支援金の申請期限が2021年5月31日であったことから、一気に事前確認の依頼が押し寄せ、5月だけで約200件の事前確認を受けることとなりました。
想像もしなかった事態に戸惑いましたが、1件も依頼を断らず、必要書類の案内から事前確認の実施、申請方法や申請後のフォローまでをボランティアでやり抜き、早朝から深夜まで、土曜も休まずに事前確認に時間と労力を費やした日々は非常に大変でしたが、一時支援金に関しては「有料・無料に係わらず事前確認を受けられない」という社会問題が生じていることを熟知していましたので、なんとか事業者のため耐えることができました。
当事務所の一時支援金の事前確認

ただし、この5月に関しては、事前に顧問先等に事情を説明し理解を得ることで成り立ったという面があります。
例えば、事前確認の電話が絶えず鳴り、営業時間内の多くを事前確認に割かなければならないので、顧問先も当職と連絡が取りにくく大変迷惑をかけました。
業務は深夜まで行い土日も休まないことで遅延させずに済みましたが、むしろ顧問先からは「安平さんらしい。無理しないでください。」と温かいお言葉をいただき励まされました。

この頃は、「不備ループ」という問題が起きることなど知る由もなく、一時支援金から休む間もなく始まる月次支援金の事前確認に対し、やり切れるか不安を感じていました。
もっとも、一時支援金よりも月次支援金の事前確認依頼はかなり少なかったのでその点は助かりましたが、月毎にある締切日当日の駆け込み依頼が多く、「1件も断らない」を貫くためには月毎の締切日をボランティアのために失うことになりました。
当事務所の月次支援金の事前確認

ところで、無料で事前確認を受けるとなると、事前確認を申し込む側としては「行政庁的な機関」と認識するためか、一定数、二度と関わることもないだろうという方がいたことも事実です。
例えば、「国からもらう事務手数料がある」という言い分で、まるで自身が相当な報酬を当職に支払っているかのような態度をとる方がいて、それに対しては、「事務手数料は1件1,000円です。しかも、あなたが受給に至らなければ手数料も支払われず完全なボランティアとなります。」と回答すると、そんな低額な手数料とは知らなかったようで、態度を改めてくれました。これは許せる例なのであえて具体的に書きましたが、かなりの忍耐力が必要であったことは紛れもない事実です。1時間以上延々と制度の苦情を言われたり、数分待たせたことで怒鳴り散らされたり文句をしつこく言われたり、様々なことがありました。
そうしたことも含めて、二度と経験することのない時間であったと思います。

さて、一時支援金では270件の事前確認を担当しましたが、その中からいわゆる「不備ループ」が発生しなかったため、その問題を知ったのはかなり遅い時期でした。
初めてニュースで不備ループの通知を見たときは驚愕しました。
当職のように、無料で事前確認を実施し国に協力した登録確認機関の苦労や、報酬を払って事前確認を受けた事業者のことを考えると、あまりにも納得のいかない現象でした。
そのため、一時支援金の不備ループ対応を「完全成功報酬」で受けることを公開し、3件の申込みのうち2件の不備ループ解消に成功しました。
その時は、月次支援金で変化を遂げた不備ループの恐ろしさを知る由もありませんでした

まさに、「知る由もなかった」の連続であったのが、一連の支援金対応です。

月次支援金の不備ループは膨大な提出書類があり、それを欠けることなく提出する必要がある上、その不足は解釈や補足資料では補えない方式となり、相当な時間を無報酬で失うことでようやくその事実を知るに至りました。
その結果、11者中1者しか不備ループを解消できませんでした(相談があった事件は不備解消に成功した1者以外、不備通知に対する書類に不足があったため)。
月次支援金「不備ループ」対応の過酷さ

ただし、ここで出した多大な損失と引き替えに、不備ループを基点とした事務局の審査基準を捉えるに至りました。
そして、不備ループが生じるかは原則として最初の申請で決まるため、事業復活支援金からは事前確認段階から不備ループを意識した対応をすることとし、有料に切り替えて臨むことにしました。
当事務所の事業復活支援金の事前確認

そのため、当事務所の事前確認を受けた方に限定した対応とならざるを得ないので、社会的な意義も重視し、不備ループに関する書籍レベルの知見を当サイトで無料で公開し、かつ、支援価格で電子書籍も販売することで、自身が守り切れない範囲の方の支援も全うしようと試みました。
「不備ループ」対策の解説記事及び書籍

以上の一連の事前確認等の支援金対応を完遂できたのは、当職の力だけではなく、当事務所職員の助力があってこそのものでした。
企業法務を専門とする当職と、会計の知見も有する当事務所の力をすべて出し尽くして臨んだ結果となります。
その姿勢が評価され、今後も関係を構築していける良い出会いも相当数ありました。

なお、事前確認の実施数は一時支援金270者及び月次支援金91者(すべて「全部確認」で無料)、事業復活支援金95者(原則として有料、一部確認でよい顧問先のみ無料)の計456者となります。

最後に、「不備ループとなるかは原則として最初の申請で決まる」のと同様に、「最初にどの法律家に依頼するかで決まる」のが法律の世界です。
今後はそれが具体的にわかるよう、様々な法務につき、当事務所ホームページも更新していきたいと思います。
企業法務の知見を応用し、未知の支援金対応も高度にやり遂げたように、「どんなことも最初に相談してもらえる法律家」となれれば幸いです。

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